土壌汚染による健康被害は、歴史的に農作物経由が主であったため、長らく土壌汚染対策は農地に限定されていました。その後、都市開発が進むにつれ、土壌汚染が判明する事例が増え、2003年に土壌汚染対策法が施行されました。
法律施行後も土壌汚染の判明事例は増加傾向にあり、土壌汚染対策法はこれまでに2度改正され、現在も見直しが議論されています。継続的に更新されている土壌汚染対策法について、土壌汚染対策の手引きともいうべきガイドラインから法制度の中身と実務を解説します。
この記事はこんな読者におすすめ
- 土壌汚染対策法について知りたい方
- 土壌汚染の区域指定や調査について知りたい方
- 土砂の運搬や処理業など関連業種に携わる方

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「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました
新しく産廃担当者となった方向けに、廃棄物処理法を中心に知っておくべきことを簡単に紹介します。
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目次
1. 土壌汚染対策法の概要
土壌汚染対策法とは、汚染された土壌による健康被害を防ぐことを目的として、土壌汚染の状況把握のための調査や汚染区域の指定、汚染の除去など、土壌汚染対策について定めた法律です。所管は環境省の水・大気環境局で、2002年に制定され翌2003年に施行されました。「土対法」とも呼ばれるこの法律は、環境大臣や都道府県知事により発せられる「調査」「区域の指定」「措置管理」などを規定しています。
<調査>
以下の場合には「土地汚染状況調査」の実施が義務付けられます。
- かつて有害物質を使用していた施設を廃止したとき
- 一定の規模を超える土地の形質変更の届出の際に、土壌汚染のおそれがあると認められたとき
- 都道府県知事等が健康被害のおそれがあると判断したとき
<区域の指定等>
調査の結果、汚染が確認された土地は以下のいずれかの区域に指定されます。
- 要措置区域(健康被害のおそれがあるため対策が必要な区域)
- 形質変更時要届出区域(健康被害のおそれはないが、形質変更時に届出が必要な区域)
<措置管理>
要措置区域に指定された場合は、汚染除去計画に基づく対策措置と実施報告が必要となります。
要措置区域の例
- 地下水等を経由した間接的な汚染土壌の摂取リスクがある場合は、地下水の水質調査、汚染土壌の封じ込め等の措置が必要
- 汚染土壌の飛散などで直接摂取のリスクがある場合は、土壌の飛散を防ぐための盛土、土壌の入れ替え、汚染された土壌の除去等の措置が必要
形質変更時要届出区域に対しては、汚染の除去等の措置は必要としませんが、土壌の搬出に対する規制や形質変更に対する制限を受けることになります。
形質変更時要届出区域の例
- 土壌汚染状況調査の結果、土壌に有害物質が含まれるものの、有害物質の摂取経路が遮断されており、健康被害が生じるおそれのない区域
- 人が立ち入らない場所で、土壌中の有害物質を人が直接摂取するおそれがない
- 周辺地域で井戸水の飲用などがなく、地下水から有害物質を摂取するおそれがない

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2. 土壌汚染対策法ガイドラインとは?
土壌汚染対策法ガイドラインとは、土壌汚染対策法を効果的に運用するために、調査から区域の指定、措置、汚染土壌の管理に関する具体的な基準や手続きを詳細に定めた指針です。このガイドラインは環境省によって作成されたもので、法律の趣旨に沿った適切な土壌汚染対策の実施を目的としています。

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3. 土壌汚染対策法の全4編
- 第1編:土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン
この編は、土壌汚染対策法の概要から始まり、土壌汚染状況調査の方法、要措置区域および形質変更時要届出区域の指定に関する事項、区域指定の申請手続き、そして汚染の除去等の措置について詳しく解説しています。 - 第2編:汚染土壌の運搬に関するガイドライン
この編は、汚染土壌の運搬に関する具体的な基準や手続き、注意事項を定めています。汚染土壌の適切な運搬方法や、運搬時の拡散防止策などが含まれています。 - 第3編:汚染土壌の処理業に関するガイドライン
この編は、汚染土壌の処理業に関する許可制度、処理基準、処理施設の要件などについて詳細に規定しています。汚染土壌の適正な処理を確保するための指針となります。 - 第4編:指定調査機関に関するガイドライン
この編は、土壌汚染対策法に基づいて土壌汚染状況調査をおこなう指定調査機関のあり方、指定の基準、技術管理者の配置、業務品質管理などに関するルールや要件、運用方法について定めています。
これらのガイドラインは、土壌汚染対策法の目的である国民の健康保護を達成するため、各段階での具体的な行動や判断の基準を示す重要な役割を担っています。
土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン
4編中の第1編となる本ガイドラインは、土壌汚染対策法の全体像を示しており、全6章にわかれています。
<第1編 土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン>
| 第1章 土壌汚染対策法の概要 |
本章は、土壌汚染対策法が人の健康被害を防ぐため、土壌汚染の状況を把握し、適切な対策を促す法律であることを説明しています。汚染が見つかった土地は、「要措置区域」や「形質変更時要届出区域」に指定され、調査や汚染除去の措置が義務付けられます。特に、汚染土壌を敷地の外へ運ぶ際は、事前届出と適正な運搬・処理が求められます。法改正で、自主的な調査への対応強化や、リスクに応じた合理的な対策が推進されています。 |
|---|---|
| 第2章 土壌汚染状況調査 |
本章では、土壌汚染状況調査の全手順を解説しています。まず、地歴調査で汚染の可能性を把握し、有害物質の種類や汚染源を特定します。その後、試料を採取・分析し、汚染の有無・範囲を詳細に調査します。人為・自然由来など原因に応じた調査方法、結果の評価・報告、そして省略した調査の追完まで、安全な土地利用のためのプロセスが説明されています。 |
| 第3章 要措置区域等の指定 |
本章では、土壌汚染が見つかった土地を、人の健康被害リスクに応じて「要措置区域」と「形質変更時要届出区域」に区分する基準を解説しています。要措置区域は、汚染により人の健康に被害が生じるおそれがある場合に指定され、都道府県知事から健康被害防止のための対策が指示されます。一方、形質変更時要届出区域は、健康被害のおそれがない土地で、土地の形質変更をおこなう際に届出が必要とされます。この区域には、臨海部特例区域など、産業活性化のために事前の届出が緩和される制度も存在します。両区域は、汚染による人の健康被害のおそれの有無で区分され、これらの情報は台帳で管理されます。 |
| 第4章 指定の申請 |
本章では、法律で義務付けられていない自主的な調査で土壌汚染が見つかった土地について、土地の所有者などが都道府県知事に申請して「要措置区域等」に指定してもらう手続きを説明しています。 |
| 第5章 汚染の除去等の措置 |
本章では、土壌汚染が見つかった「要措置区域」などで、汚染を適切に管理・除去するための具体的な対策について解説しています。土壌や地下水の汚染状況に応じて、汚染物質を取り除く「汚染除去」、閉じ込める「封じ込め」、広がりを防ぐ「拡散防止」などさまざまな「実施措置」があります。これらの汚染除去等計画、対策の完了確認、そして対策後の土地の管理や指定解除までの流れを詳しく説明しており、安全な環境を守るための重要なプロセスが理解できます。 |
| 第6章 臨海特例区域 |
本章では、臨海部の工場などが立ち並ぶ地域で、自然由来や埋め立て土砂に起因し、人の健康リスクが低い土壌汚染のある土地に適用される「臨海部特例区域」制度の概要を説明しています。この特例では、土地の形質変更時の事前届出が免除され、1年ごとの事後届出で済むため、産業活性化や土地利用が促進されます。 |
汚染土壌の運搬に関するガイドライン
このガイドラインは、土壌汚染対策法に基づき、特定有害物質で汚染された土壌の安全な運搬と処理に関して定めています。
要措置区域等から汚染土壌を区域外へ運ぶ際には、事前届出や、飛散・地下浸透防止などの運搬基準の遵守が義務付けられます。汚染土壌の適切な管理と追跡のため、管理票の使用も必須です。さらに、汚染土壌処理業者への委託義務、飛び地間移動や区域間移動、非常災害時の特例についても解説し、国民の健康保護と環境保全を図るための具体的な手続きと注意点をまとめています。
汚染土壌の処理業に関するガイドライン
このガイドラインは、土壌汚染対策法に基づき、汚染された土壌を安全に処理するためのルールを定めています。
鉛やヒ素などの特定有害物質で汚染された土壌を扱う事業者は、処理施設ごとに都道府県知事の許可が必要です。施設の種類(浄化、埋立、セメント製造など)や、許可申請の手続き、施設の構造基準、運営方法、報告義務などが詳細に説明されており、汚染の拡散を防ぎ、国民の健康を守ることを目指しています。
指定調査機関に関するガイドライン
このガイドラインは、土壌汚染対策法に基づき、「指定調査機関」と呼ばれる専門機関が、土壌汚染の調査を正しくおこなうためのルールを詳しく定めています。
具体的には、指定調査機関が国や都道府県から「指定」を受けるための条件や手続き、調査の具体的な手順、調査の品質を高く保つための管理方法、そして公正な調査を確実にするための体制について説明されています。特に、専門知識を持つ「技術管理者」が調査全体を監督する役割が重要視されています。これらのルールを守ることで、調査の信頼性を確保し、国民の健康と環境を守ることを目指しています。

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4. 土壌汚染対策法ガイドラインの補助資料
4編からなる各ガイドラインには提出書類の様式や記載例、チェックシートや調査結果を記入するための書式など、補助的な資料に該当する「Appendix」が付記されています。Appendixは図表が多用され、ガイドライン本文よりも平易でわかりやすい文章で書かれているのが特徴です。第1編に収載されている以下のAppendixは環境省のウェブサイトからWord形式でダウンロードすることができます。
また、環境省のホームページにはその他のガイドラインや参考資料などが掲載されています。

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