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廃棄物データシートとは

産業廃棄物の処理について最も大切なのは、正しい知識や資格を持った者が、正しい情報を元に処理を進めていくことです。そんな産業廃棄物の適正処理を進めていく上で役に立つのが「廃棄物データシート」です。今回は廃棄物データシートについて、その概要や目的、記入例などを解説していきます。

「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました

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「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました

新しく産廃担当者となった方向けに、廃棄物処理法を中心に知っておくべきことを簡単に紹介します。

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1. 廃棄物データシートとは

廃棄物データシートとは、WDSとも呼ばれ、廃棄物の名称や成分など、廃棄物の適正処理を進める上で必要となる各種データをまとめた書類のことです。

目的としては、排出事業者の委託する産業廃棄物が適正に処理されるために記載するものです。廃棄物処理法では、廃棄物の性状等に関する情報を排出事業者から処理業者へ提供することが求められており、その際に用いる資料として、環境省が推奨しているのが、この廃棄物データシートなのです。

廃棄物データシートの提出は、あくまでも推奨であり、必ずしも必須とされているわけではありません。しかし廃棄物を適正に処理するためには廃棄物に関する細かい情報が必要不可欠ですし、提供する情報に万が一にも抜け漏れや誤りがあってはいけません。

産業廃棄物に関する排出事業者の責任をしっかりと果たしていくためにも、積極的に活用した方が良いでしょう。

廃棄物データシートの提供が求められる産業廃棄物の種類

環境省が出している「廃棄物情報の提供に関するガイドライン」では、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリの4品目が、廃棄物データシートを提出すべき産業廃棄物とされています。これらは、見た目から含有廃棄物や有害物質の有無などがわかりにくいためです。

またそれ以外でも、ばいじんや鉱さい、燃え殻などで、有害物質等が付着・混入している可能性のあるものは、廃棄物データシートを提供すべきとされています。

見た目だけではどのような廃棄物や有害物質が含まれているかわかりにくいものに対し、廃棄物データシートの利用を推奨しています。逆に、見た目から廃棄物の性状が明確で、環境保全上の危険性がないものであれば、廃棄物データシート以外の情報提供でも問題ないとしています。

廃棄物に関する情報提供が不十分だったが故に起きた事件

平成24年に利根川水系の浄水場で、国の基準を超えるホルムアルデヒドが検出された事件があります。

これは、排出事業者が提供した廃棄物の情報に不備があり、ホルムアルデヒドの生成前の物質であるHTMが含まれた廃液を正しく処理しないままに放流してしまったことで起きた事件です。

当時の法律では、HTMは情報提供必須の物質ではなかったため、廃棄物処理法違反にこそなりませんでしたが、排出事業者は約2億9000万円もの損害賠償を請求されることになりました。

非常に痛ましい事件ではありますが、仮に廃棄物データシートを正しく作成・提供するようにしていれば、未然に防ぐこともできたでしょう。

このように、廃棄物に関する情報を正しく提供することは、環境や人々を守るのはもちろん、自社を守る意味でも非常に重要なことなのです。

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2. 廃棄物データシートの記入例

ここからは、廃棄物データシートの記入例について見て行きましょう。
廃棄物データシートの主な記載項目は、下記の通りとなります。

  • ①排出事業者名称
  • ②廃棄物の名称
  • ③廃棄物の組成・成分情報
  • ④廃棄物の種類
  • ⑤特定有害物質
  • ⑥PRTR 対象物質
  • ⑦水道水源における消毒副生成物前駆物質
  • ⑧その他含有物質
  • ⑨有害特性
  • ⑩廃棄物の物理的・化学的性状
  • ⑪品質安定性
  • ⑫関連法規
  • ⑬荷姿
  • ⑭排出頻度・数量
  • ⑮特別注意事項

【参考】 その他の情報

特に記載が難しいポイントについて、以下に解説していきます。

②廃棄物の名称

廃棄物の名称の欄は、「汚泥」や「廃油」などの法律上の名称だけでなく、より具体的な名称や呼び名を記載するようにします。また作成したデータシートが示す廃棄物を正しく管理できるよう、適当な番号も記載します。

③廃棄物の組成・成分情報

「廃棄物の組成・成分情報」の欄では、廃棄物の発生行程等を考慮しつつ、混合比率の高いと思われる順に、その組成・成分情報を記載します。
また記入欄右側のMSDSとは、化学物質等安全データシートのことで、化学物質の有害性等の情報をまとめた書類のこと。これがある場合、廃棄物に含まれる物質の特定がしやすくなるため、そこに記されたCAS No.を記載しましょう。

⑤特定有害物質

「特定有害物質」の欄では、埋立基準が設定されているなど、廃棄物処理時やその後に問題となる物質が記載されています。含有している物質には○、含有していない物質には×、含有の可能性がある物質には△を付けます。またここに記載がないものでも、取り扱いに注意が必要な物質があれば、別途記載するようにします。
特定有害物質に関する分析結果がある場合、その分析表を添付すれば、この欄の記載は必要ありません。

⑥PRTR 対象物質

PRTRとは、人や生態系に有害な化学物質を排出する事業者が、その排出量や移動量を公表する制度のことです。この制度に該当している事業者である場合は、「該当」を選択するようにしましょう。
またPRTRの対象物質については、適宜見直しが行われており、新しいものが追加されている可能性もあるため、常に最新の情報をチェックするようにしてください。

⑦水道水源における消毒副生成物前駆物質

処理を委託する廃棄物に、ホルムアルデヒドを生成しやすい表に記載されている8物質が含まれている可能性がある場合、該当する物質にチェックを入れます。

⑧その他含有物質

廃棄物処理の際や、処理後に問題となる代表的な物質が挙げられていますので、該当する物質を含んでいる場合には○を、含んでいる可能性がある場合には△を、含んでいない場合には×を付けます。またここに挙げられているもの以外でも、注意が必要な物質がある場合は、別途記載するようにします。
特定有害物質の時と同様、その他含有物質に関する分析結果がある場合は、その分析表を添付すれば、この欄の記載は必要ありません。

⑨有害特性

「爆発性」や「感染性」など、処理の過程で問題となる特性が挙げられていますので、その特性を有している場合には、「有」を選択し、該当する項目すべてにチェックを入れます。
有害特性が不明な場合は、「不明」を選択し、それを持って処理業者と今後の対応について協議しましょう。

⑩廃棄物の物理的・化学的性状

「形状」や「臭い」、「色」など、廃棄物の物理的・化学的な性状を記載します。廃棄物の種類や含有している物質によって、物理的・化学的性質は異なるため、データシートの対象となっている廃棄物が該当する項目だけ記載すれば問題ありません。

⑪品質安定性

腐敗や揮発、化学反応など、廃棄物の性状が経時変化する可能性がある場合に、「有」を選択し、どのような変化が起こるのか、何が原因で変化をするのかを記載します。

⑫関連法規

データシートの対象となる廃棄物の処理を進める上で関連する法規について、MSDSの記載も参考にしつつ、マークします。関連する資格と関連法規の正式名称は、下記の通りです。

  • 危険物取扱者(消防法)
  • 特定化学物質等作業主任者(労働安全衛生法)
  • 有機溶剤作業主任者(労働安全衛生法)
  • 毒物劇物取扱責任者(毒物及び劇物取締法)
  • 悪臭防止法

⑮特別注意事項

「他の廃棄物と混合するとガスが発生する」「鋭利な金属が含まれている」など、廃棄物の処理を進める上で特に注意すべき事項がある場合、その内容や推奨する処理方法などについて記載します。

【参考】 その他の情報

サンプル提供の有無と、サンプル採取の特性等について、該当する項目を選択します。また廃棄物の荷姿や容器などの写真がある場合には、「有」を選択します。
さらに廃棄物の発生工程について、産業廃棄物の製造工程や排出場所、原材料や副産物など、できる限り詳細に記載するようにしましょう。そうすることで、不純物混入の可能性や成分のブレ幅などの推定がしやすくなり、処理を円滑に進めることができるようになります。

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