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サービスブログ 法令コラム

広域的処理認定制度

マニフェストと委託契約の要否

前回(第3回)まで、電子委託契約サービス「er-contract」が配慮すべき法令を整理しましたが、第4回となる今回から、委託契約や電子マニフェストの運用に関する法令上のトピックを中心にご紹介することとします。

今回は、当社の会員様の間でも時折話題になってきた広域的処理認定制度(以下、「広域認定制度」)とマニフェスト、委託契約との関係について整理してみようと思います。

「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました

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「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました

新しく産廃担当者となった方向けに、廃棄物処理法を中心に知っておくべきことを簡単に紹介します。

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広域認定品目も「廃棄物」

今更かもしれませんが、広域認定制度でリサイクルされる物も「廃棄物」です。

石膏ボードなどでおなじみの広域認定制度は、メーカーリサイクルの促進を目的として廃棄物処理業の許可やマニフェスト交付を免除する特例措置を設けたものですが、これらの特例や、身近な商習慣である「下取り」と感覚的に似ていることが、広域認定品も「廃棄物」であることをつい忘れがちにさせる原因かもしれません。

廃棄物処理法の条文をみてみましょう。

同法第15条の4の3で、「産業廃棄物の広域的な処理を行い、又は行おうとする者は、・・・環境大臣の認定を受けることができる」と規定し、この制度の適用対象をそもそも産業廃棄物の広域的処理であるとしています。(一般廃棄物については同法9条の9)

 

マニフェスト交付不要の法的根拠

広域認定制度でマニフェスト交付が不要とされていることは既にご承知の通りですが、改めて根拠を確認してみます。

廃棄物処理法第12条の3第1項では「産業廃棄物を生ずる事業者は、…産業廃棄物管理票を交付…」することを原則とする一方で、「環境省令で定める場合」を例外としています。

これを受け、環境省令第8条の19で「産業廃棄物管理票の交付を要しない場合」を列挙するなかに、同条第1項第5号で「法第十五条の四の三第一項の認定を受けた者(=広域認定業者)に…産業廃棄物の…運搬又は処分を委託する場合」と規定して、認定業者に処理を委託する場合を挙げています。

 

マニフェスト交付は「免除」されているだけ

それでは、広域認定制度ではマニフェストを利用してはならないのでしょうか?

答えは否です。マニフェストの「交付を要しない」のであって、元来廃棄物を対象とする制度の運用でマニフェストの利用を禁じる理由はありません。当社の会員様にもこの制度で電子マニフェストを利用されている会員様があり、また、建設業では収集運搬で実績が多いように、そもそも認定業者ではない産業廃棄物処理業者への委託も可能です。(この場合、マニフェストは必要です。)

一方、認定業者に要求される処理工程の管理は、次の環境省令の規定を根拠にマニフェスト同等のレベルであると理解されています。

環境省令第12条の12の10第3号

「一連の処理の行程を申請者が統括して管理する体制が整備されていること。」

環境省が発行する「広域認定制度申請の手引き」(P10)には、「統括して管理する体制」の管理手法として「産業廃棄物管理票制度に準じた方法の採用等」が例示されており、マニフェスト同等の管理が期待されていることがみてとれます。

 

紙マニフェスト×電子マニフェスト徹底比較

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工程管理の問題点

マニフェストの交付免除は、認定業者の処理業許可を不要としたことのカウンターバランスとして排出事業者の便宜を図ったものとみられますが、制度の普及を促進するための緩和措置であるならば、やや実効性に疑問が残ります。

何故なら、排出事業者責任(後述)も要求される工程管理の厳格さも通常の産業廃棄物処理と大きく変わらない状況は、広域認定制度でもマニフェストを利用しようという動機として十分なものだからです。事実、この制度で電子マニフェストを利用される当社会員様は増える傾向にあります。

因みに、広域認定制度に関する電子マニフェスト制度での対応としては、認定業者を「報告不要業者」として設定し、認定業者の運搬、処分の終了報告を不要とする運用が用意されています。しかしながら、これでは認定業者を電子マニフェスト運用の当事者から排除する結果になり、認定業者に要求される工程管理を行うことができません。当社のサービスも含めた今後の課題と言えます。

 

広域認定制度と排出事業者責任

広域認定制度を排出事業者の立場でみると、マニフェストの交付免除以外の特例措置はありません。従って、マニフェストに関連する部分以外の廃棄物処理法上の排出事業者責任を果たさない場合は措置命令、罰則の対象にもなります。

また、行政報告においても、認定品目が産業廃棄物である以上、産業廃棄物としての報告が必要です。

認定品目でマニフェストを利用されていない当社の会員様も、「産業廃棄物処理計画実施状況報告書」(いわゆる多量排出事業者報告)の作成時に認定品目の排出実績を合算されていると思いますが、この報告書については平成22年の法改正で不提出、虚偽記載に過料が科されることになりましたので要注意です。認定品目の数量を加算するのを失念した結果、実際には報告が必要な排出数量を上回っていたにもかかわらず、報告書を提出しなかったという事故が起こらないとも限りません。

 

一般契約の電子化とは異なる3つの観点

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委託契約の要否

会員様から、広域認定制度でも委託契約が必要かというお問合せがありました。

これは広域認定制度による処理が委託基準の適用を受けるか否かという問題に言い換えられます。

前述の通り、マニフェスト交付以外に適用除外はありませんので、認定品目が産業廃棄物である以上、委託基準に沿った契約締結が必要です。広域認定制度でも委託契約が必要とされる根拠条文を整理しておくと、以下のとおりです。

 

許可業者他への委託

法第12条第5項
「事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、…その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。」

【上記を受けた「環境省令で定める者」の定義】

環境省令第8条の2の8第5項
「法第十五条の四の三第一項の認定を受けた者」(=広域認定を受けた収集運搬業者)

環境省令第8条の3第5項
「法第十五条の四の三第一項の認定を受けた者」(=広域認定を受けた処分業者)

 

委託基準の遵守

法第12条第6項
「事業者は、前項の規定(法第12条第5項)によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない。」

【上記を受けた「政令に定める基準」】
政令第6条の2:(いわゆる委託基準)

 

因みに、法第12条第7項は処理状況確認義務の規定です。

原文には「事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、…処理の状況に関する確認を行い、…」とあります。この確認義務は努力義務と解されてはいるものの、広域認定制度においても適用され、これを怠ると措置命令の対象とされる可能性があるということになります。

ご清覧ありがとうございました。

 

 

文責:株式会社リバスタ 芥田充弘

 

 

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