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建設工事における排出事業者の明確化

 廃棄物処理法第21条の3(第3項)をめぐる論点

 law05 今回は、2010年の廃棄物処理法改正で建設工事における「排出事業者」を明確にした同法「第21条の3」についてです。

 施行から3年以上を経過してこの条文を取り上げた理由は、重層下請による建設工事で度々争点となってきた「誰が排出事業者なのか」という議論に、この条文が一定の終止符を打った一方で、第2項以下の3つの例外規定の運用が新たな論点として現在でも時折話題になるためです。

 ただ、「第21条の3」の運用については施行前に比較的整理がなされており、環境省発信の通知や事務連絡をみれば明らかなことも多くありますので、まずはこの規定の主旨を整理し、会員様からいくつか運用上の照会があった第3項について細かく触れましょう。

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新しく産廃担当者となった方向けに、廃棄物処理法を中心に知っておくべきことを簡単に紹介します。

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誰が排出事業者か?

 2010年の廃棄物処理法改正前は、元請業者が排出事業者であることを原則としつつ、元請業者が下請負人に対し、「当該建設工事の全部を一括して請け負わせる場合」又は、「当該建設工事のうち他の部分が施工される期間とは明確に段階が画される期間に施工される工事のみを一括して請け負わせる場合」に、下請負人を排出事業者と解する余地を残していましたが、改正法第21条の3第1項では「土木建築に関する工事(…解体する工事を含む。…)が数次の請負によって行われる場合…」と広く工事一般を指し、元請業者が排出事業者である旨が法文に明記されました。

 この改正法の施行後、弊社の電子マニフェストWebサービス会員様に、商社、イベント会社など、いわゆるゼネコンとは異なる業種の会員様が増えました。

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3つの例外規定の概説

 次に、例外規定となる第2項ないし第4項の概要をみていきましょう。

第2項

 下請負人が現場で廃棄物の保管を行う場合に、排出事業者責任としての保管基準の遵守を求める規定です。この規定については実際の運用における疑義、支障はないものと思います。

 

第3項

 一定の要件の下に少量の廃棄物の運搬を行う下請負人を排出事業者とみなし、処理基準を満たす運搬を例外的に自ら運搬として許容する規定です。

 排出事業者とみなされた下請負人が自ら運搬するため業の許可は不要ですが、請負契約で下請負人が自ら運搬を行う旨が規定され、それを証する書面を携行する必要があるほか、適用にあたっては以下の要件を満たす必要があり、特別管理一般廃棄物、特別管理産業廃棄物の運搬は除かれます。

  1. 新・増築、解体工事を除く請負代金額500万円以下の工事(維持修繕工事)、または、請負代金相当額500万円以下の瑕疵補修工事であること
  2. 1回の運搬容積が1㎥以下であることが明らかとなるよう区分して運搬されること
  3. 運搬先の施設が排出事業場と同一都道府県内または隣接都道府県にあり、元請業者が所有権または使用する権原を有すること
  4. 元請業者・下請業者両者捺印の書面(事業場位置、廃棄物の種類・数量、契約期間記載)及び工事請負契約書の写しの携行
  5. 運搬途上で保管が行われないこと

 この規定に関する論点は後述します。

 

第4項

 下請負人が処理委託を行う際には、排出事業者として委託基準、マニフェスト運用の責任を負わせる規定です。

 本来、処理委託は元請業者が行うべきものですが、改正前の環境省事務連絡によると「元請業者が建設工事に伴い生ずる廃棄物を放置したまま破産等により消失した場合など、やむなく下請負人が自ら当該廃棄物の処理を委託するというような例外的な事例があった場合」を想定したものであり、「下請負人が廃棄物の処理を委託することを推奨する趣旨ではない」(※)とされていますので、この趣旨に照らせば、実際に適用されるべき事例は多くはないものと思われます。

(※)環廃対発第110204004号・環廃産発第110204001号 平成23 年2月4日 抜粋

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第3項をめぐる論点

 次に、戸建住宅、リフォーム、店舗運営を事業とされる排出事業者様から実際にお問合せを受けた事例なども含めて、第3項についての論点を確認していきましょう。

 処理業の許可の要否

 上述の要件を全て満たす場合にのみ下請負人の自ら運搬とみなされ、これらの要件のひとつでも満たさない場合は運搬業の許可が必要になります。許可を持たない下請負人がこれらの要件を満たさない運搬を行う場合、運搬が元請業者の委託により行われた場合には元請業者は委託基準違反、下請負人は無許可営業となりますので要注意です。

 なお、下請負人が排出事業者とみなされるのは運搬に関してのみであり、廃棄物の処分は元請業者が自ら処分を行うか、業の許可を持つ処分業者に委託しなければなりません。

 

マニフェスト運用

 「第21条の3」の例外規定は、下請負人が排出事業者責任の全てを負担する主旨ではなく、下請負人に適用される条文を制限列挙しています。

 そのうち「第3項」についてはマニフェストに関連する条文の適用がありませんので、マニフェストの交付(登録)は、原則として元請業者が自ら行うことになります。

 法改正に対応する施行通知では「…元請業者が下請負人に運搬の委託をしているわけではないことから、元請業者が自ら運搬する場合と同様、「運搬受託者」及び「運搬の受託」欄に下請負人の氏名等を記入する必要はない」(※1)とありますから、形式上は元請業者による自ら運搬の体裁をとることになり、同通知のなかで電子マニフェストもこれに準拠することとされています。

 ただし、同通知のうち上記に続く以下の件については、紙マニフェストと電子マニフェストでは運用が異なります。

 「元請業者が下請負人を経由して受託者に管理票を交付した場合には、「交付を担当した者の氏名」欄には、当該交付を担当した下請負人の氏名を記載すること」

 ここに言う「受託者」は下請負人が廃棄物を運搬する先の処分業者です。紙マニフェストの場合、上記のような運用は十分考えられますが、電子マニフェストの場合、「下請負人を経由して受託者に管理票を交付」することは通常の運用ではあまり考えられません。元請業者が電子マニフェストを登録する場合は、当然に「交付を担当した者の氏名」には元請業者の担当者の氏名を記載すべきです。

(※)環廃産発110317001号 平成23年3月17日 抜粋

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携行書面の電磁的記録での提示

 第3項による運用の用件とされる携行書面(※1)については、施行通知(※2)に様式も含めて詳しく解説されていますのでご確認下さい。

【環境省ホームページ】
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律等の施行について(通知)

 実際に会員様からお問合せがあったのは、この書面を電子データで携行することは可能かという内容でした。結論から申し上げますと、これは可能です。

 長くなるため法令の適用関係は省略させていただきますが、携帯電話、スマートフォン、タブレット、ノートパソコン等の電子デバイスの画面上に明瞭に表示できれば、書面を「備え付け」たものとみなされます。既にご存知のとおり、電子マニフェストの運用上携行しなければならない書面についても、同じ根拠で電子データでの携行が可能です。

(※1)環境省令第7条の2第3項第9号

(※2)環廃対発第110204005号・環廃産発第110204002号 平成23年2月4日
   (第十六-「2下請負人が行う廃棄物の運搬に係る例外」)

 

「1㎥」は現場ごとか運搬総量か?

 下請負人が複数の工事現場を巡回して廃棄物を回収、運搬する場合、上限となる「1㎥」は現場ごとに判断するのか、あるいは運搬する総量かというお問合せをいただきました。

 通知等では解釈が示されていませんが、これは「現場ごと」に判断します。ただし、ご回答いただいた環境省の担当官の方曰く、「この条文はあくまで現場での回収ごとに処理施設に運搬する形態を想定しており、巡回して回収することを奨励するものではない」ということでしたので、規定の主旨に照らして、濫用は避けるべきものと考えます。

 

「使用する権原」とは

 前述の第3項の概説の3、「使用する権原」という文言は耳慣れない表現ですが、これも施行通知(※)で明らかにされています。

 元請業者が下請負人、中間処理業者を含む第三者から貸借している施設、元請業者と処理委託契約を締結した処理業者の施設には「使用する権原」があるものとみなされますので、排出事業者と処理業者との間で委託基準に則った委託契約が成立していれば、この要件は満たされることになります。

(※)環廃対発第110204005号・環廃産発第110204002 平成23年2月4日

 

 

 ご清覧ありがとうございました。

文責:株式会社リバスタ 芥田充弘


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